当社は求人広告・人材派遣・人材紹介会社向けにWebマーケティング支援をおこなっています。
その中で異業種から新規参入される企業様からの問い合わせも多いですが、勘違いされている方も多いので、人材紹介ビジネスの難しい部分(デメリット)にスポットを当てて解説します。
人材紹介サービスの魅力
魅力①大手人材ビジネスは売上堅調×高利益率
リクルートやマイナビなど大手転職支援サービスは、テレビCMやYouTubeCMを派手にやっており「景気がいいな」と思うでしょう。実際に大手の求人サイト運営会社や人材紹介サービス運営会社は非常に売上が伸びています。
しかも、ただ売上が伸びているだけでなく、利益率が高いことも特徴の一つです。ですから「人材業界にビジネスチャンスあり」「人材ビジネスは楽勝」と考えて新規参入を検討する方がいます。
実際に「市場規模が大きい」「市場規模が伸びる余地がある」は大きな魅力です。縮小している業界よりも伸びている業界で起業しようと考えるのは間違っていません。
高い収益率を誇るビジネスモデル
人材紹介のビジネスモデルは、紹介した人物の想定年収の30%~35%が売上になります。
年収450万円なら、10人紹介して1人決定(入社決定率10%)するだけで売上150万円。年収300万円でも月3人決めれば100万円×3人で月間売上300万円が確保できます。年間で売上3600万円。
多少は年収や決定率の誤差があっても月2~3人を決め続ければ、年間売上2000万円は固い。家賃や広告費を年間1000万円以内に抑えれば利益が1000万円残る。年収1000万円も楽勝!と考える方が多いようです。
魅力②少ない初期投資で起業できる
また、少ない初期投資で起業できるのも魅力の一つです。人材ビジネスは店舗型ビジネスほど初期投資がかからず、アパレルのように在庫が必要ありません。
人材紹介の場合、一定の面談スペース(最近はレンタルオフィス可)が必要で、免許取得時に基準資産額として最低500万円が必要ではあるものの、人材派遣よりも安く、許認可取得ハードルは高くありません。
以上2つの理由から「人材紹介ビジネスは美味しい」と考えている人がいます。最近では、独立起業セミナーで積極的に人材ビジネスでの起業を推奨している経営コンサル会社もいます。
しかしながら、人材紹介ビジネスは決して美味しいわけではなく、簡単でもありません。ビジネスモデルはシンプルですが、実際には利益率もそれほど高くなく、泥臭く進めていかなければいけないビジネスです。
新規サービスは簡単ではない
まず最初にお伝えしたいのが、どんな分野であれ、新規ビジネスは簡単ではありません。既存の大手企業・大手サービスがある中で、とくにこれといった強みがない会社と付き合うメリットはないからです。
どんな業界にも共通しますが、新規ビジネスは最初の3年間が一番厳しい時期であり、最初が一番の正念場です。最初は赤字が続くため、これに耐えれない社長が多いです。
見切りの速さは大事ですが、忍耐も大事です。この判断が難しい。致命的なダメージになる前に早期撤退か、ビジネス継続か…。判断を失敗すれば倒産のリスクもありますが、私としてはだからこそ参入するなら断固たる決意のもと参入することをおすすめします。
難しい理由①求職者の獲得の問題
人材ビジネスの一番重要なポイントは、(優秀な)求職者を如何にして獲得するかです。
上述している売上の計算式では、合計紹介人数を母数に採用決定率10%(※)で計算していますが、さらに逆算すると企業に紹介できる10人を獲得するためには、面談件数で30人、そのための問い合わせ件数で50人必要です。ここの計算がスッポリ抜けている人がいます。
単純に1件の問い合わせを獲得するために1万円かかるとして、50件の問い合わせに50万円かかります。問い合わせ件数からの採用決定率2%でシミュレーション計算すると…
想定年収300万円の報酬は売上100万円。売上から広告費を差し引いて利益50万円。さらに家賃や人件費など固定費を考えると±0円です。
ちなみに人材紹介会社の集客担当だったら「1万円で1人集客できるなら御の字」と答える人もいるくらい獲得単価としては高くない金額になります。
※現場では面談からの採用決定率で計算することが多いです。面談からの採用決定率は各社で大きく違いがあり、5~40%と各社で大きな差があります。
これはシステマチックに大量の求人票を渡すタイプと、じっくり個人と向き合い紹介する求人票を厳選するかの差になります。
そのためにも自社集客が重要になります。自分たちで我流でスタートせずに人材紹介の集客が得意な株式会社クリティカルブレインといった会社に相談することをおすすめします。
人材ビジネスの集客と重複登録の問題
Webマーケティングが無知なら、転職サイトに高いお金を払い、転職サイトに登録しているユーザーに対してスカウトメッセージを送ります。「はじめまして!転職エージェントの鈴木太郎と言います!ぜひ弊社経由で転職しませんか?」と。
優秀な経歴を持っている(紹介で決まりそうな)求職者には毎日何十件も来るので、返信率は1%以下と言われている世界です。毎日せっせと送り続けなければいけません。
ようやく求職者と面談できたと思ったら、リクルートエージェントやマイナビエージェントにも登録している求職者がほとんどです。「せっかく開拓した企業にはすでに応募済み」は高頻度で発生すると思ったほうがいいでしょう。早い者勝ちの世界です。
ようやく求人票を紹介して、次は最終選考だ。選考が決まれば内定だ。というタイミングで「リクルートエージェント経由で受けた会社から内定をもらったので内定承諾しました」なんてことも日常的に起こりえます。
ちなみに世の中には様々な経歴の人がいます。無職期間が長く、紹介しづらい経歴だったり、他社の人材紹介会社からは断られた。といった経歴だったりもします。スカウトメールに毎月高いお金を払っているのに一人も決まらないことも…。
シミュレーション計算では採用決定率2%でトントンの計算をしています。他の転職エージェントに候補者を奪われることを考慮すると、採用決定率1%も全然あり得ます。つまり赤字です。
難しい理由②企業開拓の問題
企業の新規開拓も簡単ではありません。「契約自体にはお金が発生しないから企業開拓は簡単」という口コミがいますが、実際にはそれほど簡単ではありません。
なぜなら企業の人事部には、転職エージェントと契約できるキャパに限界があるからです。契約自体は無料だからといって、20社以上の転職エージェントと契約しても管理が難しい。
自然に中堅程度の企業なら5社程度が限界になります。ここにまず信頼性の高い大手転職エージェント(リクルートエージェント、マイナビエージェント、パソナキャリア、ワークポート、ビズリーチ等)が入ります。
第2候補として職種や業界特化型の転職エージェントが1~2社入ります。つまり、何も特徴がない中小規模の転職エージェントが入る余地がありません。まして異業種参入の新しい企業なんて話も聞いてくれないでしょう。
仮に担当者に繋いでもらっても「おたくにはどんな人材がいるの?」と質問されます。まずは企業開拓を進めてから求職者を集めると説明すると「じゃあウチの募集条件に合う求職者が集まってから契約を結びましょうか?そのほうが契約が無駄にならないで済むので」と言われてしまいます。
それならばと、求職者の獲得を先に進めても「どんな求人がありますか?」と言われます。正直に「まだない」とは言えませんよね。色々なニーズの求職者の要望に応えるには最低でも紹介先20社は欲しいところです。
つまり求職者の集客と企業開拓を同時並行で進めなければいけないわけですが、一人や二人の組織体制では、到底間に合わないレベルの多忙さになります。
最近では「エージェントバンク」「クラウドエージェント」のような便利な求人データベースサービスがあるので求人票の開拓もハードルが下がりましたが、当然お金がかかりますので利益率はさらに下がります。
まとめ
表面的な部分だけで判断してしまい「人材紹介ビジネスは楽勝」と考える人が後を絶ちません。人材紹介ビジネスで独立して成功している人を見ると、やはり人材紹介会社出身者が多いです。これは人材ビジネスが大変だということを最初から知っているため、ツラい時期も辛抱できることが理由の一つに挙げられます。
人材ビジネスの新規参入ならびに独立開業を目指しているなら「儲かる」といった動機だけではなく、「絶対に転職マーケットを変えてやる!」「赤字は関係ない。自分がバイトしてでも転職で幸せにする人を増やす」といった使命感溢れる人でないと長続きしません。
当社ではそうした人材ビジネスに使命感のある企業様の集客のお手伝いができれば幸いです。